モリサワパスポートにUDタイポスが登場

モリサワパスポートアップグレードきっと2011が届いたので記事を書いて見ました(→PDF版はこちら

ついに、憧れの“タイポス”ファミリーの一つ、“UDタイポス”がモリサワパスポートのラインナップに追加された。
ついに、とは言うが、それほど期待していたわけではない。というのも、タイポスファミリーを展開するタイプバンク社は、フォントワークス社が展開するフォントライセンスプログラム“LETS”事業に参画し、“タイプバンクLETS”として2009年2月からサービスを開始していたからだ。いわばライバルと言えるLETS事業からすでに提供されているフォントが、モリサワパスポートのラインナップに組み込まれるはずはない-そう思っていた。
 しかし、8月10日、びっくりするようなニュースが飛び込んでくる。モリサワがタイプバンクの株式を取得し、完全子会社化したというものだ。同時に、リョービおよびリョービイマジクスからのフォント事業譲渡の発表もあった。この知らせを受け、いずれリョービやタイプバンクの書体もモリサワパスポートに入ってくることになるかもしれないという、あくまで将来的な希望を持った。
 8月17日、アップグレードキット2011の内容が発表される。すでに6月14日付のニュースリリースで黎ミンなど新たな書体が追加されることは発表されていたが、昨年から提供されているヒラギノ書体へさらに角ゴオールドとUD角ゴの一部が追加され、タイプバンク書体の一部がラインナップに加わるというもので、UDタイポスの名もそれに含まれていた。
 もともとタイポス系書体の字形に惚れ込んでいた自分にとって、まもなくタイポス書体を使ってデザインすることが可能になるというのは信じられないようなことだった。昨日、思ったよりも早く、UDタイポスを含んだ“アップグレードキット2011”が9月5日に我が家に届き、こうしてUDタイポスを使ってこの記事を書いている。

絶妙なアクセント処理
早速、添付の解説書を読んでみたり、自分で文字を組んだりしてみた。とめやはらいなどのアクセントの処理は、以前から思っていたとおりスタイリッシュで読む人に安心感を与える。このほどよいアクセントが、明朝体とも、ゴシック体とも違う独特の上品さを文字列全体に与える。(図1)

“な”のデザインが好き
特に好きな文字は“な”。自分の今まで見てきた書体の中でタイポスの“な”が一番だと思う。2画目がほんの少しだけ内側に反っていること、通常は3画目となる点の部分が横線となっていることでデザイン的に安定しているというのがその理由だ。他にも“を”“い”なども好きだが、言い出すとキリがなくなると思うのでひとつにしておく。(図2)漢字の方は、これからじっくり字形を見て分析してみたいと思う。

既存書体との住み分け
すでにモリサワから提供されていた「フォーク」が類似書体となるが、並べてみるとフォークのほうが少しカジュアルな印象。タイトルなどでカジュアルさを強めに出したい場合は、フォークを使ったほうが良さそうだと感じた。逆に、明朝よりは柔らかいが格調の高さや知性を出したい場合は、UDタイポスが最適といえそうだ。(図3)

いわゆる“読ませる文章”を組むためにはもうひとつ下のウェイト(漢字タイポスで言えば“45”)が欲しいと思ったけれど、UDタイポスでも4ウェイトあるので贅沢は言えないところ。

【後記】…記事を書き進め検証作業をするうちに、使ってみてパッと思いついた印象と書き終えた今の印象が微妙に変化してしまっていることは否めませんし、これからも印象は変わってゆくかもしれません。洗練された専門知識があるわけでもなく、思うがままに書き進めたものなので、その分野の専門家の方にとっては「?」と思う点が多々あるかもしれませんが、とあるユーザーの気ままなレビューと受けとめていただければ幸いです。ご意見等有りましたら http://centree.net よりお寄せ下さい。
現在の仕事の範囲では、使用頻度がそれほど多くなることもなさそうだが、通常「黎ミン」や「リュウミン」、あるいは「新ゴ」等を使って作成していた注意書きの文章などを「UDタイポス」に変更してどうなるか試してみたいと思った。(図4)

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